2026年 02月 28日
ロブスターの尻尾 |
Sfogliatelle
細かく、薄い層、という意味らしい。
ラスヴェガス、シーザーズパレス。
夜中のイタリアン・デリ。
テレビで名をはせたイタリア系ペストリーシェフの出店で、こどもたちがピッザを注文しているところで、このペストリーがあった。
ずっと食べてみたかったペストリーだ。
たったひとつで7ドルくらいした。
ピッザ一切れでもそのくらいの値段で、久しぶりのヴェガスに到着した夜から、もう帰りたいと思った。
夜更けていたから空腹のまま眠るつもりだったが、試さないわけにはいかなかった。
パイ状に層になった貝の姿のペストリーのなかには、トロリというよりはかためのクリームが入っていて、期待が大きかったせいか、値段のせいか、焼いて時間がたった売れ残りなのか、どうってことはなくて、がっかりした。
でもそのときは、いったん見たものを食べなかったら、ずっと気になってしかたがなかったと思う。
17世紀に作られたペストリー。
それでも、このペストリーはきっとおいしいはずだ、本場イタリアに行けないものなら、自分で焼いてみようとレシピを検索した。
貝ではなくて、ロブスターの尻尾に似せたものらしい。
強力粉にほんの少しの蜂蜜と塩を混ぜた水だけで練った生地をパスタマシーンで薄く薄く延ばして、ラードを表面に縫り、くるくると巻いて、筒状になったのを切り、それをうまくずらせながら円錐形にした中に、セモリナ粉を熱湯で練ったのにリコッタチーズを混ぜて香りづけしたクリームを詰めて焼く。
生地の用意に手間がかかるは間違いないし、クリームも作りなれたカスタードクリームとは異なる。
今夕ちょっと作ってみよう、というにはたいへんそうだが、生地をとりあえず作って冷凍しておけば、あとはクリームだけ、とすればなんでもない。
クリームも作って冷蔵庫でしばらく休ませないと生地に包みにくいとある。
ラスヴェガスで食べたものには、クリームが固めで、とろりとしたクリームが詰まっているもののと想像していたのはわたしの勝手で、もともとそういうことらしい。
生地にはたっぷりクリームを詰めないと焼いてもふっくらしない、と注意書きがある。
クリームを詰めたら、しっかり封じないと焼くうちにクリームが流れ出ないかと心配するのに、クリームは固めだからそんな心配は無用、ともあった。
餃子みたいに、端をしっかりひねって閉じなくていいのか。
生きる年月が長くなると、あらゆる先入観がある。
これはこういうものではないか、というとぎれとぎれの情報が頭に詰まっているものだから、ひとのレシピを読んでも、常にそういう疑問があって厄介だ。
いつか、デンヴァーのアラブ料理屋で、こんなに旨いフムスがあるかというのに出会った。
フムスなんて、茹でたひよこ豆、タヒニ、大蒜、オリーブオイルだけでできているものなのに、どうしてこんなに旨くなるのか。
主人が出てきて、作り方を教えてくれた。
自分の作り方と違うので横から質問していたら、彼はちょっとだまって、自分のレシピを知りたいのではないのか、一通り聞きなさい、と言われて我に返った。
それからは自戒している。
ひとにものを訊ねるときには、横やりを入れない。
自分だってひとから意見を訊かれてそうされると不愉快だ。
それでもひとのレシピを読んでいると、常に頭の中で、え、そんなことしていいの、イースト入れなくて膨らむの、などと疑問符は絶えないものだ。
いくつかのレシピをしっかり読んだつもりでも、あとで間違いに気がついた。
伸ばした生地に塗るラードを電子レンジで緩めたこと。
刷毛で塗るのに緩めるのは当然と早合点した。
だからレシピにあるラードの半分しか使わなかったから、うまく層に焼きあがらないかと心配した。
生地をできる限りに薄く伸ばしたつもりだったが、もっと薄くするべきだった。
フィロほどに、生地の向こうが透けて見えるほどにするべきだった。
伝統的なレシピには、生地の間に塗る脂肪にはラードを勧めている。
現代のものにはバターも使うが、ラードのほうが風味も焼き上がりも勝る、とある。
初めてラードを購入した。
室温でもかちかちに硬くない。
間違ってレンジで温めた際、ラードの臭みに気がついた。
温めなければそんなことはなかったろう。
クリームは難しそうだったが、実はなんということはない。
セモリナを砂糖、塩を合わせた熱湯で粥にして冷めたのに、リコッタチーズ、卵、ヴァニラ、オレンジの皮と果汁を合わせればいい。
生地
強力粉 500g
塩 小匙1
蜂蜜 大匙1
水 200㏄
ラード 150g
粉類に、蜂蜜を水に溶かして、合わせてこねて1時間休ませておく。
6等分ほどに分けて、パスタマシーンにくぐらせながら、しだいに薄く薄く延ばす。
なんどもくぐらせて、向こうがみえるほどに薄くなったら、ラード(室温)を塗りながら、ロールケーキの成型のようにきつく巻き付ける。
一本の丸太状にし、ワックスペーパーに包んで、成型するまで冷凍、あるいは冷蔵する。
面倒は面倒でも、パスタマシーンを使い慣れていれば、そうたいへんな作業でもない。
クリーム
水 500㏄
砂糖 100g
塩 ひとつまみ
セモリナ 140g
卵 1
リコッタチーズ 450g
シナモン 小匙半分
オレンジゼスト 1個分
コアントロー 大匙1
ヴァニラ 大匙1
水、砂糖、塩を沸騰させ、セモリナを少しずつ振り入れて粥状に煮る。
滑らかに煮あがったら、そのまま冷ましておく。
冷めたセモリナに、残りの材料をよく混ぜ合わせ、冷蔵庫で休ませる。
硬い粥になったセモリナはだまになって、卵やリコタと合わせにくくフードプロセッサーで滑らかにしたが、裏ごししてもよかろう。
生地を2㎝幅に切り分け、麺棒を使わず、指で円錐状に伸ばしてクリームを詰めて、220℃で20-25分焼き、粉糖を振る。
焼きたてか、焼いたその日に供する。
生地を円錐状に伸ばす時点で、層が分離してくるが、そう神経質にならずとも、そう丁寧にしなくとも、かまわなかった。
レシピでは15個できるはずが、25個できて、クリームを惜しみなく詰めたのに、いくらか残った。
もっと大きくてよかったのだ。
そのほうがクリームを包みやすいだろう。
半分をカナスタに、半分をあきらとみあの仕事場に持っていかせた。
オヴンから出して粉糖をかけた熱々を食べてみた。
パイ層がもっと薄くするのだった。
それでも要領はわかった。
わたしのはロブスターの尻尾というよりも蛤みたいだ。
尾らしく先をとがらせるべきなのだ。
二度目は改良できるだろう。
仕上げに粉糖を振りかけるにしても、リコッタクリームには総量で100g、パイ皮には大匙1の蜂蜜のみが甘味なので、菓子にしては砂糖が少ない。
クリームのオレンジ風味が効いている。
目におもしろい焼き菓子だ。
by ymomen
| 2026-02-28 01:11
| お菓子
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Comments(6)
momenさん、おはようございます!
これを手作りしちゃうとはすごいです!
私もPuff Pastry系のお菓子が大好きなので ちょっと前にSfogliatellaという貝の形をした焼き菓子を あるペイストリーシェフが作る動画を見たのです。 momenさんの焼かれたロブスターの尻尾のお菓子ととてもよく似ている感じ。 すご~く美味しそうだなあ、って思って食い入るように見ていたのに 生地を見た目Phylloくらい薄くして、その工程の手間を見ていると自分で作ってみる気がおこりませんでした。 ほとんどクロワッサンを自分で作らないのと同じ理由です。 冷凍のPhylloを使ってできないかとか 手間をかけないことばっかり考えてしまいます。
これを手作りしちゃうとはすごいです!
私もPuff Pastry系のお菓子が大好きなので ちょっと前にSfogliatellaという貝の形をした焼き菓子を あるペイストリーシェフが作る動画を見たのです。 momenさんの焼かれたロブスターの尻尾のお菓子ととてもよく似ている感じ。 すご~く美味しそうだなあ、って思って食い入るように見ていたのに 生地を見た目Phylloくらい薄くして、その工程の手間を見ていると自分で作ってみる気がおこりませんでした。 ほとんどクロワッサンを自分で作らないのと同じ理由です。 冷凍のPhylloを使ってできないかとか 手間をかけないことばっかり考えてしまいます。
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ブロンクスのイタリア街に義両親と出かけ、ペーストリー店でこれを買いました。表面はパリッとした感じで、クリームは固め。懐かしいです。
> Ziggyusさん
これがそのペストリーなのです。
クロワッサンや折りパイのように、バターを折りこみながら伸ばすのではなく、油脂の入らない生地を伸ばして薄くなったところに油脂を塗り巻くので、伸ばしている間に生地がだれる心配をすることがありません。
パスタマシーンさえあれば、難しいものではありませんでしたよ。
フィロ生地よりもしっかりしています。
フィロ生地でできないことはないかもしれません。
ただフィロには強力粉が使われていないので、成型の時点で崩れやすいかも???
これがそのペストリーなのです。
クロワッサンや折りパイのように、バターを折りこみながら伸ばすのではなく、油脂の入らない生地を伸ばして薄くなったところに油脂を塗り巻くので、伸ばしている間に生地がだれる心配をすることがありません。
パスタマシーンさえあれば、難しいものではありませんでしたよ。
フィロ生地よりもしっかりしています。
フィロ生地でできないことはないかもしれません。
ただフィロには強力粉が使われていないので、成型の時点で崩れやすいかも???
> etigoya13-3さん
日本にはなんでもありますねえ!
自作では、生地が硬めでパリパリしていますが、それは生地をもっと薄くしなかったからだと反省していたのですが、そういうものなのですかね?
手間はかかりますが、二日に分けて作ればそうでもありませんでした。
生地を切り分けてクリームを詰める作業も、結びをにぎるほどのことでしたよ。
日持ちのしない菓子なので、大勢喜んでくれるひとがいるならば作り甲斐のあるものです。
焼いた翌日もちょっと焼くとおいしいそうです。
日本にはなんでもありますねえ!
自作では、生地が硬めでパリパリしていますが、それは生地をもっと薄くしなかったからだと反省していたのですが、そういうものなのですかね?
手間はかかりますが、二日に分けて作ればそうでもありませんでした。
生地を切り分けてクリームを詰める作業も、結びをにぎるほどのことでしたよ。
日持ちのしない菓子なので、大勢喜んでくれるひとがいるならば作り甲斐のあるものです。
焼いた翌日もちょっと焼くとおいしいそうです。





