2025年 09月 12日
色気も薬 |
ゲイルのお父さんの様子がいけない。
食欲も減退しているし、ベッドから起き上がるのも、体を起こすのも一苦労らしくて、介護するゲイルもやつれている。
涙をがまんしながら、愉しいことを話そうと話題を探しながらわたしの髪を整えてくれるゲイルに、いいじゃないの、お父さんの話をしていいよ、と慰めるほかなかったとき、スティ―ヴが来た。
彼もヘアドレッサーで、本業のほかに美容学校の講師の経験もありながら、体調を崩したこともあって、あれこれ仕事になることをやってきたひとだ。
わたしがゲイルに髪をやってもらうようになってから、彼との面識も増えて顔見知りになった。
スティ-ヴはこの数か月、84歳の独り暮らしの女性の介護をしている。
日に4時間訪問して、身の回りの世話をする。
彼女の息子夫婦を知っていた縁で、面談してすぐに彼女の眼鏡にかなったらしい。
スティ―ヴはわたしよりちょっと上でも、彼女よりは20歳ほども若くて小奇麗にしているから”ときめき”もあったようで、彼が彼女の世話をするようになってから、みるみる若返ったのだそうだ。
歩行器で数歩しか歩けなかったのに、歩行距離がずいぶん伸びて、外出したいとねだるようになった。
スティ―ヴが髪を整えてあげると、自分でつけまつげをつけて、口紅もひく。
ともだちとの昼食に同席すると、彼女らは羨ましがって彼に髪を整えてもらいたいのに、彼女はそれをさせない。
スティーヴは彼女のとくべつなともだちなのだから。
スティ―ヴ本人もこの出会いを心から愉しんでいるのが微笑ましい。
ゲイルのお父さんのところに訪れる介護士のなかに、器量のいいひとがいて、そのひとが来るときにはおとうさんの機嫌がいいそうだ。
あんなに病んでいて食べる元気もないのに、きれいなひとが来ると嬉しいのよ、とゲイルは困ったような顔で笑っていた。
”色気”も薬よね、色気があるうちは元気もあるのよね、と三人で話した。
わたしたちが出逢ったのは、ゲイルとスティーヴがD通りにあるサロンのブースを借りているときのことだった。
あのころ、わたしたちはもう若いとは思ってなかったけど、いまになれば若かったと振り返る。
ダリルがオーナーで、街で知られている新聞に載るような女性ばかりが顧客で、彼女らは何度わたしと同じときを共有しても決して挨拶を返すことはなかった。
ダリルはゲイで、恋人が絶えず、決まった恋人と同居しても浮気を止めなくて、わたしよりも年上のダリルはいまでもそんなふうらしい。
スティーヴもゲイで、いまだにダリルは彼に言い寄っているというから、そういう仲だったの、といまになってわたしが聞いたら、ずっとそうなのよ、ということだ。
ダリルも見かけは相応に老けたけど、こないだダウンタウンのバーで誰かと別れたあと、すぐに違う誰かと落ち合っていたのを見かけた、とゲイルのサロンのブースを借りている若いアビゲイルが言っていた。
by ymomen
| 2025-09-12 02:04
| 健康と美容
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Comments(2)
色気は生きる糧、私の母もそうでしたね。
身体を触る機会のある職種は、異性を選んだ。
特に女医は嫌だった様で、クリニックに頼んで男性医師に変えて貰った。ディケアのサポートする方々も男性指定。
家に来る買い物ヘルプやお掃除ヘルプは身体接触が無かったので、女性達でも大丈夫でしたね。笑
身体を触る機会のある職種は、異性を選んだ。
特に女医は嫌だった様で、クリニックに頼んで男性医師に変えて貰った。ディケアのサポートする方々も男性指定。
家に来る買い物ヘルプやお掃除ヘルプは身体接触が無かったので、女性達でも大丈夫でしたね。笑
1
りかさん
そうでしたか。
わたしは両親の性的な部分を見たくなかったし、こどもと親の関係はそういうものだと思っていたけれど、ここでは親子でもそんな生臭い話もするのに違和感を感じました。
being intelligentであるということは、知識が豊富ということでなく、生き延びる法を身につけていることであると聞きましたが、本能や欲望を隠さないで生きるのもまたその在り方かとも思います。
そうでしたか。
わたしは両親の性的な部分を見たくなかったし、こどもと親の関係はそういうものだと思っていたけれど、ここでは親子でもそんな生臭い話もするのに違和感を感じました。
being intelligentであるということは、知識が豊富ということでなく、生き延びる法を身につけていることであると聞きましたが、本能や欲望を隠さないで生きるのもまたその在り方かとも思います。


