2025年 07月 15日
BLITZED/ Norman Ohler |
"Blitzed"
"Tripped"
Norman Ohler
Blitzed
酒や薬に酔うこと
Tripped
精神に影響する薬物を服用し、幻覚を経験すること
”Blitzed”は、ヒットラーの晩年の健康状態を綴っているというので読んだ(オーディオ版で聴いた)。
消化不良のような単なる体調不調を訴えて、ビタミンCを処方させる時点から、動物から抽出したのホルモン服用、コカイン常用とエスカレートしていった。
ハイになるのを愉しむというのではなく、疲労から回復し任務に携わる、爆撃で耳鼓膜を破った抗痛などに処方されたが、しだいに薬に依存していき廃人となった。
読み終って、別に知らなかったことはなかったような気もしたが、この書が出版されるまで、案外一般には知られていなかったことらしい。
彼は菜食主義者であり、パンと砂糖ばかり食べていたため、浮腫みと腹部膨張がそもそもの不調の原因というのが情けない。
それなりの思いがあったのだろうが、動物のホルモンを取り入れていればもはや菜食とは言えない。
ヒットラー本人に限らず、肉体と精神疲労に耐え、戦争に勝つため、精神を、肉体をコントロールする薬物が軍内で処方された事実。
日本軍のカミカゼ・パイロットも、服用したという。
現在の中東テロリスト軍もそうらしい。
ヒトとしての怖れや情けをぬぐって、獣になるために。
1938年、ドイツではmethamphetamine が、”Pervitin”という名前で風邪薬のように薬局であたりまえに販売されていた。
家庭で珈琲を飲む習慣ができるまえのことで、疲労解消、意気を高揚するために一般市民が服用していたという。
”Tripped”では、ヒットラーから焦点を外して、あらゆる薬物をとりあげている。
LSD、マリワナ、コカイン、メサエンフェタミン、など、どれももともとは、ひとを貶める目的で存在しなかった。
ひとが乱用したにすぎない。
薬物乱用に日常を冒された身近な体験をしているわたしは、ながいごと、これら一切を否定してきた。
こどもたちがある年頃になると、そういう気配のある一切に敏感になっていた。
いまでも自分も服用したいと思わないし、こどもたちにも無縁のものであって欲しいと思うが、”Blitzed”の最終章にLSDに関することで、思いが揺るいでいる。
アルツハイマーを病む著者の母に、微量のLSDを投薬している実話。
病んでからは読むことをやめ、シャワーを浴びることもいやがり、別人となった母を、父が世話をしているが、LSDを珈琲に混ぜて飲むと、再び新聞を読み、自分でシャワーを浴び、かつての母が蘇るのだそうだ。
著者が母にLSDを試すことをかつて裁判官であった父に提案したとき、大きな迷いがあったそうだ。
彼もまた、LSDというものを、それを乱用する者らを裁いてきたから。
"ハイ”になるほどではない、ごくごく微量の服用で、それも週に1-2度。
”快復”もまた一時的にすぎないらしいが、この病の治療薬がないいま、このようなこころみを単に否定できるか。
LSDが脳の麻痺した部分を活性化するのではないかと著者は言う。
先日医師との会話で、アルツハイマーを病む遺伝子の存在を確認するテストはすでにあると知った。
治療法は、まだない。
アルツハイマー患者本人も哀れだが、患者を取り囲む親近者全てに影響する病である。
いつか自分が病んで、LSDを服用することによってまわりの安息が得られるならそれで得るものがあると思う。
アルツハイマー患者の自分がトリップする結果が、かつての自分に戻るということか。
自分でなくなった者が、LSDでもとの自分である体験ができるのは喜ばしいことか、哀しいことか。
先が短い自分なら、そうして当たり前の会話をこどもらとしてから死にたいだろう。
知らなかった分野を習うことも、眠っていた脳の部分を活性化することではないか。
薬物が精神の配線を変える不思議。
薬物でなくても、未知の刺激物があるはずだ。
音楽なり、住む環境なり、書物なり、食事なり、刺激に値するものはいくつもあるに違いない。
アルツハイマ―を病んだ母と電話で話していると、単純な同じことを繰り返したが、ピアノ曲の話になると人が変わったようにむつかしいことをきりりと説明していた。
母がピアノ教師でこどものころはうんざりしていたが、いつまでもそんな母のピアノ論を聴いていたいと思った。
母にとってのピアノは、”智恵子”のレモンだった。
by ymomen
| 2025-07-15 03:38
| 特別な本
|
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Comments(2)
momenさん、こんにちは!
今回の投稿を読んで、ふとRobin WilliamsとRobert De Niroの Awakeningsという映画を思い出しました。
アルツハイマーに関してはここ数年特に、よく考えます。両親のこれから、そして自分や夫の事とか。。。というのもさすがにこの歳になると、近いお友達が認知を患う親御さんのお世話で奮闘しているケースが多いので。
そういえば、アルツハイマーの元バレリーナの女性が、クラシック音楽を流すと手だけでも踊っているような動作をするというドキュメンタリーを見た覚えがあります。 心身、そして頭もなるべくは健康なお年寄りでいたいものです。
今回の投稿を読んで、ふとRobin WilliamsとRobert De Niroの Awakeningsという映画を思い出しました。
アルツハイマーに関してはここ数年特に、よく考えます。両親のこれから、そして自分や夫の事とか。。。というのもさすがにこの歳になると、近いお友達が認知を患う親御さんのお世話で奮闘しているケースが多いので。
そういえば、アルツハイマーの元バレリーナの女性が、クラシック音楽を流すと手だけでも踊っているような動作をするというドキュメンタリーを見た覚えがあります。 心身、そして頭もなるべくは健康なお年寄りでいたいものです。
1
ziggyさん
あの映画で使われていたのは、と検索しましたら、L-DOPA/Levodopaということです。
哀しい映画でした。
わたしたちの年代はアルツハイマー病になる親、自分にもその可能性があるのもそう先ではない、という現実が重いですね。
周りの者に負担にならないように、そうなった場合の準備を、と思います。
多くのことを忘れても、ひとにいつまでも残る記憶というのがあるのでしょう。
あの映画で使われていたのは、と検索しましたら、L-DOPA/Levodopaということです。
哀しい映画でした。
わたしたちの年代はアルツハイマー病になる親、自分にもその可能性があるのもそう先ではない、という現実が重いですね。
周りの者に負担にならないように、そうなった場合の準備を、と思います。
多くのことを忘れても、ひとにいつまでも残る記憶というのがあるのでしょう。



