2024年 04月 26日
万年筆 |
書写を始めてから、万年筆を愛用している。
それ以来、出先でなにかちょっとした書き物や署名を求められて、そこにあるボールペンでは物足りないと思っても、万年筆を持ち歩くほどでもない。
10ドルの安物でも、書き心地良く、満足している。
それでも書写は毎日のことで、コンバータやインクの詰め方を検索するうちに、美しい万年筆を見れば、欲が出る。
Netflixのシリーズ”Ripley”は、アラン・ドロンが演じた”太陽がいっぱい”、マット・デイモンが演じた編作を新たに製作したもので、終始白黒の画面でありながら、イタリアの建築物、石畳、海辺など一切を美しく映している。
Ripleyはイタリアの紺碧の海を臨むDickie宅を訪れるなり、卓上の万年筆に魅了されて盗む。
いったんはそれが発覚されないうちに返却するが、ついにDickieを殺害し、彼になりすましてからは、そのペンは彼の一部になる。
ぼってりと滑らかで光沢があり重みのありそうな黒い万年筆は、ある程度背丈のある男性の手に属する。
紙の繊維を走る音がするほどの筆圧を伴う文字には幅があり、力強い。
左利きのRipleyの書き方には癖がある。
裕福な家庭に生まれ育ったDickieが、なんの疑問も大した感謝もなく手にしている贅沢のすべてが、その万年筆に象徴されている。
Ripleyは嫉妬する。
自分がDickieになればいいのだ。
ジャケットの内ポケットからことあるごとにその万年筆を取り出して署名するのが誇らしげである。
ホテルの宿帳、銀行での小切手。
そこにあるペンを勧められても、やんわり断って、愛用の万年筆を取り出すのだ。
小さな妬みがみるみるうちに肥満して、罪を隠すためにさらに罪を犯して、取り返しのつかないところへ暴走するRipleyは明らかに犯罪者でも、哀しい。
自分という存在を一生否定しながら安息を求める。
身の丈にあうところで幸せでいられることがそんなに難しいことなのか。
Ripleyを影のなかで見守りながら、明るいところに引きずり出されて裁かれることなく、いっそ自害して罪滅ぼししてはくれないかと願うわたしがいた。
"Ripley, fountain pen"
と検索してみたら、案の定、このペンの正体に興味のあるひとはほかにいた。
Mont Blanc 149
このドラマの舞台の1950年代の末期には、地位と富を象徴していたもののひとつであったらしい。
そんなテレビドラマを観てしまったことも影響して、万年筆の物色をしている。
高額な出費をする度胸はない。
自分に見合ったものでありたい。
手ごろな値段で、いくらか重みと太さのある、繊細というよりはしっかりしたものがいい。
目下愛用のパイロット製Kakunoは、透明のボディなのでインクの残量が明瞭なのがよくて、それが見えなくなるのは不安になりそうだ。
でもRipleyほどに執着するほどの万年筆は欲しくないと思う。
こうして書いていくうちに、書写を始めて間もないわたしが、筆具に拘るのが恥ずかしくなってきた。
by ymomen
| 2024-04-26 00:36
| 特別なもの
|
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Comments(4)
ひとが愛用していた万年筆
万年筆は靴と一緒で、持ち主の癖がついているから
親族以外の万年筆は使うの難しいです。
そういえば、プラチナ万年筆のCMに郷ひろみが
出ていて、お祝いでいただいてことがありました。
万年筆は靴と一緒で、持ち主の癖がついているから
親族以外の万年筆は使うの難しいです。
そういえば、プラチナ万年筆のCMに郷ひろみが
出ていて、お祝いでいただいてことがありました。
1
ソーニァさん
万年筆とタイプライターはひとに貸してはいけないと、敬愛する須賀敦子さんが恩師の言葉として書いておられました。
でもペン先を交換するということもできるということを知りました。
そんなコマーシャルありましたか。
わたしにもいただいたものがありましたが、どこへしまったのか。
いまこちらで買おうと思うと、日本製ではパイロットが入手しやすいようです。
拘る方は、ペン先、ボディと好みに合わせて注文なさるのですってね。
万年筆とタイプライターはひとに貸してはいけないと、敬愛する須賀敦子さんが恩師の言葉として書いておられました。
でもペン先を交換するということもできるということを知りました。
そんなコマーシャルありましたか。
わたしにもいただいたものがありましたが、どこへしまったのか。
いまこちらで買おうと思うと、日本製ではパイロットが入手しやすいようです。
拘る方は、ペン先、ボディと好みに合わせて注文なさるのですってね。
momenさん、こんにちは。
この投稿を読んで、急いで結婚当時、誕生日に夫に買ってもらったMont Blancのペンを探したらデスクの引き出しにしっかりオリジナルの箱に入ってそっと息をひそめている状態で見つかりました。 探したら。。。というのはもう数十年使ってないから。。。
万年筆は私には使いこなせる自信もないし、いいお値段もするし、選んだのは インクのRefillを替えるだけで良い、ボールペンでした。 それでも 恐れ多くて、失くすのも怖くて箪笥(引き出し)の肥しにしてしまっていました。 久しぶりに手に取ってみたら きれいな曲線で色褪せることもなくきれいです。
もっと使わないと勿体ないですね。Refillをオーダーして引き出しにしまわずに愛用しようと思いました。
この投稿を読んで、急いで結婚当時、誕生日に夫に買ってもらったMont Blancのペンを探したらデスクの引き出しにしっかりオリジナルの箱に入ってそっと息をひそめている状態で見つかりました。 探したら。。。というのはもう数十年使ってないから。。。
万年筆は私には使いこなせる自信もないし、いいお値段もするし、選んだのは インクのRefillを替えるだけで良い、ボールペンでした。 それでも 恐れ多くて、失くすのも怖くて箪笥(引き出し)の肥しにしてしまっていました。 久しぶりに手に取ってみたら きれいな曲線で色褪せることもなくきれいです。
もっと使わないと勿体ないですね。Refillをオーダーして引き出しにしまわずに愛用しようと思いました。
ziggyさん
おはようございます。
Mont Blancをお持ちですか。
いいなあ。
ぜひお使い下さい。
アマゾンにはMont Blancなど格の違うものは扱っていません。
じっくりとご主人がお選びになったものでしょう。
いつかご紹介くださるとうれしいです。
おはようございます。
Mont Blancをお持ちですか。
いいなあ。
ぜひお使い下さい。
アマゾンにはMont Blancなど格の違うものは扱っていません。
じっくりとご主人がお選びになったものでしょう。
いつかご紹介くださるとうれしいです。


