2023年 07月 10日
Moon Flower/ ヨルガオ |
庭に咲く花には無頓着な夫が、台所から庭を見下ろして、あの白い花を植えたのかと訊く。
毎年咲いているじゃないの、
と応えると、いままで気がつかなかったらしい。
義父が再婚したマリアンというひとは植物や鳥に詳しく、庭の手入れを丹念にしていた。
彼女の庭で、ある夕刻に見事にラッパのように咲いたかぐわしい花に圧倒されて、その種をもらった。
ピーマンの空洞のなかにある平たい種にそっくりな姿で、庭に撒いたらあっけないように育って、そんなちっぽけな種からがっしりした茎を伸ばしてブッシュと表現したいような姿にたちまち育った。
威勢がよく育つが、寒い季節になると、枯れてしまった植物は茶色にうらびれて骸骨のような風采なので引き抜く。
どうしてその種が裏庭まで飛んだのか、砂利を敷き詰めてあるところに生えている。
砂利を敷いたのは、雑草を防ぐためだから、ほかの植物にも条件は良くないはずなのに、Moon Flowerは至って勢いよく育っている。
Moon Flower
月の花
昼間の灼熱の太陽のもとでは、蝙蝠傘を閉じるようにひだを折りたたんでいる。
夕刻になると見事に花開き、薫る。
白い花の縁には薄いむらさき。
それぞれの尖った縁にちりちりと伸びた細い流線がさらに可憐である。
溜まった水が勢いを伴って管を落ちるとき、右に巻くとか、自然の多くの流れは右巻きだと聞いた記憶があるが、この花は左に巻いて閉じている。
香水のノートに香りに、個別の花の名前のほかに、白い花、とか、黄色い花、と表記されていることがある。
どういうわけか、赤い花、というのはないようだ。
白い花、というと、夜目に映える種類が多い。
薫りは妖しい。
砂利にあちこち生えるので、抜こうと思いながら、それらが若いうちに抜かないと根を張って、作業用の手袋をした両手で抜こうとしてもわたしの力では抜けない。
呆気なく茎だけ折れてしまって、残った根からまた茎を生やす。
折れてしまった茎は、冬枯れしてしまったスカスカの木のような慣れ果てとは違って、水分をたっぷり含んだもので、不愉快なほどに生臭い。
ひとはどれほど高貴でも、美しくとも、その体内にははらわたを持ち、ときには汚臭を放つ。
邪心も、淫靡な欲望もある。
日本語ではヨルガオというこの植物は、それに似ている。
花がどれだけ優雅でも、その下にはそうでないものがある。
花が終わると、棘で覆われた柿のような青い実をつけやがて茶色に乾き、弾けて空洞にひそめた種子をまき散らす。
この種子をひとを含めた動物が服用すると幻覚作用があるというのは聞いていた。
改めて検索すると、種子だけではなく、葉や根にも同じ作用があるらしい。
乾燥させて煙草のようにその煙を吸引したり、茶にするなどの方法があるという。
服用する量によっては血圧上昇、心臓疾患、てんかん、発作、意識不明に及ぶ可能性もあると読んだ。
毒気があるのはいよいよ妖しい。
美しいだけになお妖しい。
夕刻8時を過ぎてもまだ明るいが、雨が降りそうに肌寒い風に吹かれてヨルガオの写真を撮った。
そのうち憑かれるような不気味さを感じて家に入った。
by ymomen
| 2023-07-10 02:26
| ガーデニング
|
Trackback
|
Comments(2)
momenさん、こんにちは!
一枚目の写真を見て、第一印象は”きれい!”ユウガオとは初めて知りました。。。でも記事をよんでいくうちに最後の写真を見た時には 同じ花のはずなのに 私も不気味な印象を持ってしまいました。 きれいな花には棘があると言われますよね。 毒性のある植物が結構あるのにも驚きます。特に紫陽花やチューリップ、スズランもそうだと聞いてびっくりしました。
一枚目の写真を見て、第一印象は”きれい!”ユウガオとは初めて知りました。。。でも記事をよんでいくうちに最後の写真を見た時には 同じ花のはずなのに 私も不気味な印象を持ってしまいました。 きれいな花には棘があると言われますよね。 毒性のある植物が結構あるのにも驚きます。特に紫陽花やチューリップ、スズランもそうだと聞いてびっくりしました。
2
ziggyさん
投稿ののち、実は後味が悪かったのです。
Moon Flowerのこと、あまりにもけなしたようで。
芥子はもちろんのこと、扱いようによって毒になるものも、あるいはその毒性を少量使うことによって体調を整える用途にしたりというのは古来から知られていたこと。
ひとを含める、地上の命あるものはそれぞれ使命があるのでしょう。
美しいものに毒性があることもあるし、醜いと呼ばれるものが美しいものを秘めていることもある
投稿ののち、実は後味が悪かったのです。
Moon Flowerのこと、あまりにもけなしたようで。
芥子はもちろんのこと、扱いようによって毒になるものも、あるいはその毒性を少量使うことによって体調を整える用途にしたりというのは古来から知られていたこと。
ひとを含める、地上の命あるものはそれぞれ使命があるのでしょう。
美しいものに毒性があることもあるし、醜いと呼ばれるものが美しいものを秘めていることもある







