2023年 05月 02日
ライラックの春 |
ライラックが咲いている。
小さな赤に近い朱色の粒つぶの蕾をつけて、やがてうすい紫色の花を咲かせる。
この家に引っ越したのは、あきらを産むひと月前のことで、花の咲く木が欲しくて選んだ種のひとつだ。
庭のあちこちに苗木を植えて、ほぼ20年経ったいまでは、どれも大きくなっている。
ここに正式に春が来た、と言えるのはライラックがついに咲いたときだ。
甘くない、すーっと清涼感のある、芳香だ。
日本語では、むらさきはしどい、紫丁香花。
花言葉は、思い出、初恋。
熱愛とか、まわりまでを巻き込んで騒動する類のものではなくて、静かにひとを想う、片想いで終わりそうな恋。
ここは日夜の気温差が激しい。
ひどく乾燥している。
土も痩せている。
長い灼熱の夏と、寒い冬。
それに耐えるライラックは、可憐な姿でも、たくましい。
いろ鮮やかな羽の鳥、めずらしいさえずりの鳥が舞う。
ベランダを覆う屋根の端に、毎春巣をかける鳥がいて、親鳥が行ったり来たりしているのを見ていたら、雛鳥が二羽、小さな口を開いている。
妊娠していたときは、命というものに感情的になっていて、散歩していて木にかかる鳥の巣を見つけては涙がでて、自分でも滑稽であった。
ぶどうの葉も出てきた。
枯れているかのような蔦につく。
まるで薔薇のつぼみのようなほの赤い小さな姿だ。
赤ちゃんがそっとあくびするように、ちいさな握りしめたこぶしをひらくように、日に日に葉を開く。
そのほの紅いいろは、小さなこどもの頬や、膝小僧、肘、指先などのいろを想わせる。
この葡萄は、こどもの時分に馴染んだコンコルド種で、果肉がしっかりしていて酸味が強い。
市販されいていたものと違い粒が小さく、種も多いうえに、美味といえどもその皮も厚い。
長い夏を過ごして、その夏も枯れかかったころやっと、房が熟す。
できるだけ摘み取るが、蔦のうらに隠れて採りわすれた果実は、秋の寒さや気の早い雪をかぶって、固く皴のある皮のなかで甘い甘いワインになる。

鉢にゼラニウムを植えるのを恒例にしているが、あと数週間待つことにする。
今年こそは早めに植えてしまったと満足した年には、その直後に春の嵐といえるような強風と雹を伴う豪雨に見舞われ、せっかくの花も葉も傷んで、かわいそうなことをした。
毎年、ここで蛇の抜け殻を見つけるのを待ちわびている。
by ymomen
| 2023-05-02 01:10
| アメリカの季節 春
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Comments(2)
詩的な表現力を羨ましく思いながら拝見しています。
特に葡萄の葉の下りで赤ちゃんの柔らかな赤っぽいぷっくりした皮膚などを思い浮かべて成る程と。
ライラック、好きな花で植えたいのに、何故かいつも育ちにくい環境に住みます。そちらは乾燥しているので香りも清涼感をエンジョイ出来るでしょう。湿度の高い場所ですとその香りも少し強めになりますが。
特に葡萄の葉の下りで赤ちゃんの柔らかな赤っぽいぷっくりした皮膚などを思い浮かべて成る程と。
ライラック、好きな花で植えたいのに、何故かいつも育ちにくい環境に住みます。そちらは乾燥しているので香りも清涼感をエンジョイ出来るでしょう。湿度の高い場所ですとその香りも少し強めになりますが。
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> sunandshadows2020さん
貴ブログにて美しく珍しい花々を拝見しております。
そうですね。
湿度で薫りは変わるのですよね。
一枝手折ったものをグラスに活けて台所に置いていて、そばで読み物をしていたら、つんとするくらいに強く香っていて、 意外に感じました。
ここには根付かない植物もたくさんあります。
ひとも土地との相性がありますものね。
貴ブログにて美しく珍しい花々を拝見しております。
そうですね。
湿度で薫りは変わるのですよね。
一枝手折ったものをグラスに活けて台所に置いていて、そばで読み物をしていたら、つんとするくらいに強く香っていて、 意外に感じました。
ここには根付かない植物もたくさんあります。
ひとも土地との相性がありますものね。





