2011年 03月 23日
仙台からの手紙 |
先日投稿した”Letter from sendai”を、ここでご紹介するほかにも、全世界に住む友人知人に送信し、反響を呼びました
手紙の意を損なうのを懸念して、原文のまま転載しましたが、それでは、多くのひとの目に触れないのが残念だという声をいただき、和訳することがいまのわたしにできることなら、と思い直しています
以下、訳文
ここ仙台の実態は想像を絶している
それでも助けてくれる素晴らしい友人とともにあり、自分は幸運としか言いようがない
僕の家は小屋とも呼べないような棲家で、目下友人の家に仮住まい
みなで、水、食料、ケロシンヒーターなどの資源を分かち合い、一部屋に列を作って休む
ろうそくのともし火のもとで食事をし、会話をする
温かく、親密で、美しい
日中、家のなかの掃除をみなでする
車のなかにいて、ナビゲーションスクリーンでニュースを観るひと、水源が開いていればそこに列を作るひと
水道が使える家があるときには、表示を出して、隣人がビンやバケツを持参で、もらい水できるように計る
ここにいて心底驚いていることは、略奪がない、そして列を乱すひとがいないこと
またの地震にそなえて、玄関の扉をみな開けたまま
”こうして昔、みんな助け合ったんだ”
とひとは言う
地震はさらに起きている
昨夜は15分きざみ
サイレンが鳴りやまず、ヘリコプターが上空を頻繁に飛ぶ
昨夜数時間、水道が使えた
今日は半日
電気はこの午後使えるようになった
ガスは未だ不通
これもこの地域のことで、これだけの資源に恵まれているが、そうでないところもある
誰も数日からだを洗っていない
その不快感はあるが、そんなことよりももっとだいじなことがいまのぼくらにはある
不必要なものを全くぬぐった、ある種の感覚
自分ひとりが、でなく、我々がそろって生き延びるために必要な本能、理屈にまどわされることのない思考、思いやり、を駆使して、いま生きている
不思議な平行線がここにはある
あるところでは家がめちゃめちゃになっている
そして、あるところでは、洗濯物が陽に干されている
水と食料の列に並ぶひと
犬を散歩させているひと
みんな共存している
思いがけなかった美は、夜にもあった
静寂
車が走らない
ひとも歩いていない
夜空は星が散るばかり
いままで、ひとつやふたつの星は見た記憶があったけれど、星で埋め尽くされた夜の天
空に仙台の山々はくっきりと浮かび、空気は澄んでいる
そして
日本のひとびとはすばらしい
日々、わが”小屋”を点検に来て、きょうは電気が来ているので、このメイルを送信する
玄関に見つけたのは、食料と水
誰が置いてくれたのかわからない
でもここにある
緑色の帽子を被った老人たちがこのあたりを一軒、一軒うかがっては、みなの無事を確認している
見知らぬひとどうしが、助けをたずねあっている
ここに恐怖はない
ことの起こりを変えることに対しての諦めはあっても、恐怖やパニックは、ない
余震のほかに、この先、また大きな地震があるかもしれないという
来月か、それからもっと先か
絶え間ない揺れを日々感じている
いまぼくがいるのは、いくらか高台で、よそよりも地盤がしっかりしている
昨夜友人のご主人が田舎から水と食料を持ってきてくれた
助けがここにもある
この地球でなにか宇宙的な変化といえるようなことがおきているのではないだろうか
この瞬間、ぼくはこうして日本にいて、心を大きく開けるだけ開いて、耳をすましている
弟が、こんなことになって、己の存在が小さく思えるのではないかと訊いたが、そんなことはない
むしろ、たとえようもない巨大なものの一部になりえたように感じている
生という波は厳しく、そして偉大なもの
<訳 完>
*このメイルを転送でわたしが受け取ったのは、北米コロラド時間の十九日夜のこと
その週水曜日(十六日)の会(A Pacfic Zen Institute Sangha)で読まれた手紙なので、実際に仙台からこの手紙が送信されたのは、それ以前ということです
翻訳には力を尽くしましたが、その分野で素人です
拙い箇所をご容赦ください
また、この手紙の執筆者の境遇に比べて、もっと過酷な困難に耐えておられるかたには、この投稿が不愉快に思われるのではないかと懸念しています
お許しください
手紙の意を損なうのを懸念して、原文のまま転載しましたが、それでは、多くのひとの目に触れないのが残念だという声をいただき、和訳することがいまのわたしにできることなら、と思い直しています
以下、訳文
ここ仙台の実態は想像を絶している
それでも助けてくれる素晴らしい友人とともにあり、自分は幸運としか言いようがない
僕の家は小屋とも呼べないような棲家で、目下友人の家に仮住まい
みなで、水、食料、ケロシンヒーターなどの資源を分かち合い、一部屋に列を作って休む
ろうそくのともし火のもとで食事をし、会話をする
温かく、親密で、美しい
日中、家のなかの掃除をみなでする
車のなかにいて、ナビゲーションスクリーンでニュースを観るひと、水源が開いていればそこに列を作るひと
水道が使える家があるときには、表示を出して、隣人がビンやバケツを持参で、もらい水できるように計る
ここにいて心底驚いていることは、略奪がない、そして列を乱すひとがいないこと
またの地震にそなえて、玄関の扉をみな開けたまま
”こうして昔、みんな助け合ったんだ”
とひとは言う
地震はさらに起きている
昨夜は15分きざみ
サイレンが鳴りやまず、ヘリコプターが上空を頻繁に飛ぶ
昨夜数時間、水道が使えた
今日は半日
電気はこの午後使えるようになった
ガスは未だ不通
これもこの地域のことで、これだけの資源に恵まれているが、そうでないところもある
誰も数日からだを洗っていない
その不快感はあるが、そんなことよりももっとだいじなことがいまのぼくらにはある
不必要なものを全くぬぐった、ある種の感覚
自分ひとりが、でなく、我々がそろって生き延びるために必要な本能、理屈にまどわされることのない思考、思いやり、を駆使して、いま生きている
不思議な平行線がここにはある
あるところでは家がめちゃめちゃになっている
そして、あるところでは、洗濯物が陽に干されている
水と食料の列に並ぶひと
犬を散歩させているひと
みんな共存している
思いがけなかった美は、夜にもあった
静寂
車が走らない
ひとも歩いていない
夜空は星が散るばかり
いままで、ひとつやふたつの星は見た記憶があったけれど、星で埋め尽くされた夜の天
空に仙台の山々はくっきりと浮かび、空気は澄んでいる
そして
日本のひとびとはすばらしい
日々、わが”小屋”を点検に来て、きょうは電気が来ているので、このメイルを送信する
玄関に見つけたのは、食料と水
誰が置いてくれたのかわからない
でもここにある
緑色の帽子を被った老人たちがこのあたりを一軒、一軒うかがっては、みなの無事を確認している
見知らぬひとどうしが、助けをたずねあっている
ここに恐怖はない
ことの起こりを変えることに対しての諦めはあっても、恐怖やパニックは、ない
余震のほかに、この先、また大きな地震があるかもしれないという
来月か、それからもっと先か
絶え間ない揺れを日々感じている
いまぼくがいるのは、いくらか高台で、よそよりも地盤がしっかりしている
昨夜友人のご主人が田舎から水と食料を持ってきてくれた
助けがここにもある
この地球でなにか宇宙的な変化といえるようなことがおきているのではないだろうか
この瞬間、ぼくはこうして日本にいて、心を大きく開けるだけ開いて、耳をすましている
弟が、こんなことになって、己の存在が小さく思えるのではないかと訊いたが、そんなことはない
むしろ、たとえようもない巨大なものの一部になりえたように感じている
生という波は厳しく、そして偉大なもの
<訳 完>
*このメイルを転送でわたしが受け取ったのは、北米コロラド時間の十九日夜のこと
その週水曜日(十六日)の会(A Pacfic Zen Institute Sangha)で読まれた手紙なので、実際に仙台からこの手紙が送信されたのは、それ以前ということです
翻訳には力を尽くしましたが、その分野で素人です
拙い箇所をご容赦ください
また、この手紙の執筆者の境遇に比べて、もっと過酷な困難に耐えておられるかたには、この投稿が不愉快に思われるのではないかと懸念しています
お許しください
by ymomen
| 2011-03-23 06:50
|
Trackback(2)
|
Comments(14)
Tracked
from 本と旅とそれから
at 2011-03-25 22:49
Tracked
from リュックサッカーでいこう
at 2011-03-27 16:21
タイトル : 音楽の力
今日は旅行から離れた話題で。 今、日本は非常に困難な事態に見舞われ、なかでも被災地の方々の厳しい状況はテレビの画面から十分伝わってきます。 避難所に心が休まるようなヒーリングミュージックでも流したらどうかと…。電気や器械が必要で、耳障りに感じられるかもしれないから現実的でないですね。 でも音楽によって元気になったり泣けたり…。 元気になる歌(音楽)はなにかと考えて、いろいろ浮かんだけれど、一曲だけ挙げるなら、「愛は勝つ」(KAN)にしました。 好きな曲を思い浮かべたら、気...... more
今日は旅行から離れた話題で。 今、日本は非常に困難な事態に見舞われ、なかでも被災地の方々の厳しい状況はテレビの画面から十分伝わってきます。 避難所に心が休まるようなヒーリングミュージックでも流したらどうかと…。電気や器械が必要で、耳障りに感じられるかもしれないから現実的でないですね。 でも音楽によって元気になったり泣けたり…。 元気になる歌(音楽)はなにかと考えて、いろいろ浮かんだけれど、一曲だけ挙げるなら、「愛は勝つ」(KAN)にしました。 好きな曲を思い浮かべたら、気...... more
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by
shizuka-2 at 2011-03-23 14:49
この手紙、
金沢のブログにも載せさせていただいても
かまいませんか?
みんなに知ってもらいたいです。
金沢のブログにも載せさせていただいても
かまいませんか?
みんなに知ってもらいたいです。
0
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by
sakanatowani
at 2011-03-23 19:06
x
はじめまして。
この手紙を紹介してくださいって、ありがとうございます。
心に勇気をもらいました。
私自身、今外国で、外国人として暮らしているので、日本にいる外国の方々は、どうしてらっしゃるんだろうと思っていたのです。
人間って、温かいなあ。強いなあ。そう思います。
この手紙を紹介してくださいって、ありがとうございます。
心に勇気をもらいました。
私自身、今外国で、外国人として暮らしているので、日本にいる外国の方々は、どうしてらっしゃるんだろうと思っていたのです。
人間って、温かいなあ。強いなあ。そう思います。
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by
tomate11 at 2011-03-23 20:49
もめんさん、日本語訳ありがとうございました。
一部、私のブログにも紹介させて頂きました。
トラバを送信したのですが、残念ながら上手く送れていないようで・・・(T_T)。
でも、リンクさせて頂きました。
一部、私のブログにも紹介させて頂きました。
トラバを送信したのですが、残念ながら上手く送れていないようで・・・(T_T)。
でも、リンクさせて頂きました。
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by
まなみ
at 2011-03-23 22:17
x
日本語にして多くの人が読めるようになってよかったですね。
外国の方も被災して日本人と同じかそれ以上に辛い思いをしている時に日本人のよさを分かってもらえることがあって本当にうれしいです。
だけど原発の問題は日本=危険地域としてどんどん広まっていくのではないかと心配です。
放射線レベルも野菜や水、地面にまで影響を与えてしまっているのを私たちだってどうすればいいのかわかりません。
東京だって水の制限がでたのですから。
そして今夜九州でも地震がありました。日本中いつ地震が起こるかわからないのも怖いです。
外国の方も被災して日本人と同じかそれ以上に辛い思いをしている時に日本人のよさを分かってもらえることがあって本当にうれしいです。
だけど原発の問題は日本=危険地域としてどんどん広まっていくのではないかと心配です。
放射線レベルも野菜や水、地面にまで影響を与えてしまっているのを私たちだってどうすればいいのかわかりません。
東京だって水の制限がでたのですから。
そして今夜九州でも地震がありました。日本中いつ地震が起こるかわからないのも怖いです。
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bananan_bou at 2011-03-23 22:29
被災地の方々の、秩序を守りながらお互い助けあってる姿にはほんとに敬服するばかりです。
外国の方にとっては、なおさらそう感じられるかもしれませんね。
今日のニュースで、仙台市の海岸から約2km陸地に入った田んぼのなかで、津波で流されてきたらしきイルカが救助され、元気に海へ帰って行ったというものがありました。
なんか、心が和みます。
その一方、一部では義援金詐欺やらなんやら、この混乱に乗じてよからぬことを考える輩も現れてきていうよう。
そういう話を聞くと、ほんとにいたたまれませんね。
外国の方にとっては、なおさらそう感じられるかもしれませんね。
今日のニュースで、仙台市の海岸から約2km陸地に入った田んぼのなかで、津波で流されてきたらしきイルカが救助され、元気に海へ帰って行ったというものがありました。
なんか、心が和みます。
その一方、一部では義援金詐欺やらなんやら、この混乱に乗じてよからぬことを考える輩も現れてきていうよう。
そういう話を聞くと、ほんとにいたたまれませんね。
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ymomen at 2011-03-24 13:05
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ymomen at 2011-03-24 13:10
Sakanaさん
こちらこそはじめまして
海外の生活が長くなると、帰省しても、日本も自分にとっては外国のような気がしてきますが、今回のようなことがあると、自分はやっぱり日本人だと意識しました
非常時には、人間の弱さが残酷な形で目の当たりになるのが常ですが・・・・
日本人として誇りに思います
こちらこそはじめまして
海外の生活が長くなると、帰省しても、日本も自分にとっては外国のような気がしてきますが、今回のようなことがあると、自分はやっぱり日本人だと意識しました
非常時には、人間の弱さが残酷な形で目の当たりになるのが常ですが・・・・
日本人として誇りに思います
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ymomen at 2011-03-24 13:11
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ymomen at 2011-03-24 13:17
Mikiさん
どういたしまして
わたしもMikiさんの投稿とTBしようと思ったけれど、よくわからないのです
ごめんなさい
でもMikiさん経由のかたがこの投稿に目を通してくださっている
この手紙の和訳をしたのは、よかったです
さらりと英語で読んでいたのとは違い、もっと深いところで理解できたように思うから
ありがとうございました
どういたしまして
わたしもMikiさんの投稿とTBしようと思ったけれど、よくわからないのです
ごめんなさい
でもMikiさん経由のかたがこの投稿に目を通してくださっている
この手紙の和訳をしたのは、よかったです
さらりと英語で読んでいたのとは違い、もっと深いところで理解できたように思うから
ありがとうございました
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ymomen at 2011-03-24 13:21
まなみさん
これからどうなるのでしょう
先の心配をするのは当然だけど、その心配があまりにも大きすぎるならば、一日単位で前に進むしかない日もあっていいのではないでしょうか
一日単位でもつらすぎるならば、半日
半日後のことを考えるのもつらいなら、1時間で
尺度は違うけど、もう明日はないように思えた時期、そんなふうに生きたことがありました
これからどうなるのでしょう
先の心配をするのは当然だけど、その心配があまりにも大きすぎるならば、一日単位で前に進むしかない日もあっていいのではないでしょうか
一日単位でもつらすぎるならば、半日
半日後のことを考えるのもつらいなら、1時間で
尺度は違うけど、もう明日はないように思えた時期、そんなふうに生きたことがありました
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ymomen at 2011-03-24 13:28
ばななさん、
非常時を利用して悪事を働くのも人間の本能なのかもしれません
どんな環境にいようとも、善悪は存在する
常にわたしたちは試されている
こういうときにわたしも混乱するのです
イルカの話は美談だけど、そのイルカを救った労力と資源がこういうとき、人間に向けられるのが正しいのではないか、などと・・・
また、この手紙を読んで感動しているなんて、目の前で家族を失った遺族の方には無神経なのではないか、とか悩むのです
非常時を利用して悪事を働くのも人間の本能なのかもしれません
どんな環境にいようとも、善悪は存在する
常にわたしたちは試されている
こういうときにわたしも混乱するのです
イルカの話は美談だけど、そのイルカを救った労力と資源がこういうとき、人間に向けられるのが正しいのではないか、などと・・・
また、この手紙を読んで感動しているなんて、目の前で家族を失った遺族の方には無神経なのではないか、とか悩むのです
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ruksak at 2011-03-27 16:25
もめんさん
はじめまして。lazyMikiさんのところから来たruksakといいます。
Mikiさんのブログで一部紹介されていたお手紙の全文、こちらもあたかな気持ちになります。
トラックバックさせていただきました。
日本を見守っていてくださいね。
はじめまして。lazyMikiさんのところから来たruksakといいます。
Mikiさんのブログで一部紹介されていたお手紙の全文、こちらもあたかな気持ちになります。
トラックバックさせていただきました。
日本を見守っていてくださいね。
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ymomen at 2011-03-29 01:43